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プロダクト改善に役立つユーザーの「言葉」分析:オフィスツールで始める具体的なステップ

Tags: UXデザイン, プロダクト開発, ユーザーリサーチ, データ分析, オフィスツール

ユーザーの「言葉」に注目する重要性

プロダクト開発において、ユーザーの真のニーズや課題を理解することは不可欠です。そのための手段として、ユーザーインタビューやアンケート、ユーザーテストなどが広く行われています。これらの調査でユーザーから得られる「言葉」は、プロダクトの現状に対する率直な評価、期待、そして隠されたニーズが凝縮された貴重な情報源です。

ユーザーがどのような言葉でプロダクトを表現するかを知ることは、単に表面的な意見を聞く以上の意味を持ちます。ユーザーの言葉遣いからは、彼らがプロダクトや関連する概念をどのように理解しているか、どのようなメンタルモデルを持っているか、そしてどのような文脈で使用しているかが浮かび上がってきます。例えば、「クリック」と「タップ」、「登録」と「申し込む」といった言葉の選び方の違い一つにも、ユーザーの経験や期待が反映されていることがあります。

しかし、非デザイナーの担当者にとって、「ユーザーの言葉」をどのように収集し、分析し、プロダクト改善に繋げれば良いか、具体的な方法が見えにくいかもしれません。専門的な分析ツールや高度な知識が必要だと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、特別なデザインツールや分析ツールを使わず、普段業務で使用しているオフィスツール(スプレッドシートやドキュメント作成ツールなど)を活用して、ユーザーの言葉を分析し、プロダクト改善のヒントを見つける具体的なステップをご紹介します。

言葉の分析から何が得られるか

ユーザーの言葉を分析することで、以下のようなプロダクト改善に役立つ洞察を得ることが期待できます。

分析に活用できるデータソース

ユーザーの言葉を集めるためのデータソースは身近なところに多数存在します。オフィスツールで収集・整理しやすい代表的なソースを挙げます。

これらのデータから、「ユーザーがプロダクトについて語っている部分」を抽出・収集します。

オフィスツールで始める言葉分析の具体的なステップ

ここでは、スプレッドシート(Microsoft ExcelやGoogle Sheetsなど)を中心に活用した分析ステップをご紹介します。

ステップ1: データの収集と整理

まず、分析対象とするデータソースから、ユーザーがプロダクトについて言及している部分をテキストデータとして抽出します。

例えば、アンケートの自由記述回答、サポートログのテキスト、インタビューの逐語録などから、関連性の高い部分をコピー&ペーストします。

これらのテキストデータをスプレッドシートに集約します。1つの行を1つの発言や意見のまとまりとし、以下の情報を列として記録すると整理しやすくなります。

ステップ2: キーワードとフレーズの抽出

集約したテキストデータ全体を読み返し、特に注目すべき単語や言い回し、繰り返し現れるフレーズを抽出します。

抽出した言葉やフレーズを、元の発言と紐づけてスプレッドシートにメモしておくと、後から文脈を確認しやすくなります。

ステップ3: カテゴリ分けとグルーピング

抽出したキーワードやフレーズ、あるいはユーザーの個々の発言全体を、共通するテーマや意味合いに基づいてカテゴリに分類し、グルーピングします。

スプレッドシートに新しい列を追加し、「カテゴリ」や「テーマ」といった列名を設定します。各発言や抽出した言葉に対して、該当するカテゴリ名を記入していきます。例えば、以下のようなカテゴリが考えられます。

カテゴリ名に迷う場合は、最初は仮の名前で分類を進め、データが集まるにつれて refine(洗練)していく形で問題ありません。スプレッドシートの並べ替え機能を使えば、同じカテゴリの発言をまとめて表示できるため、全体像を把握しやすくなります。

ステップ4: 洞察(インサイト)の発見

カテゴリ分けされたユーザーの言葉を俯瞰し、そこからプロダクト改善に繋がる洞察(インサイト)を導き出します。

単に言葉を分類するだけでなく、「なぜユーザーはその言葉を使っているのか?」「その言葉の背景にあるユーザーの状況や感情は何か?」といった問いを立てて考えてみることが重要です。

例えば、「『設定』という言葉を使わずに『アカウント情報の変更』と言っているユーザーが多い」という分類結果があったとします。ここから「ユーザーはプロダクトの『設定』機能が、アカウント情報のみを扱う場所だと誤解している可能性がある」「一般的な『設定』という言葉が、ユーザーの期待する操作(例:通知設定、プライバシー設定など)を連想させていないかもしれない」といった洞察が生まれます。

発見した洞察は、具体的な記述としてスプレッドシートや別のドキュメントにまとめます。「ユーザーは〇〇という言葉で△△について言及しており、その背景には□□という課題やニーズがあると考えられる」のように構造化して記述すると、伝わりやすくなります。

ステップ5: プロダクト改善への接続

最後に、発見した洞察を具体的なプロダクト改善アクションに繋げます。

例えば、「ユーザーは『設定』をアカウント情報変更と誤解している」という洞察からは、以下のような改善アクションが考えられます。

発見した洞察と、そこから考えられる改善アクションをリスト化し、優先順位を検討します。スプレッドシートに「改善アクション案」「関連機能」「優先度」といった列を追加して整理することも有効です。これらの情報を開発チームと共有することで、ユーザー視点に基づいた議論を促進できます。

実践のヒントと注意点

まとめ

ユーザーがプロダクトについて使う「言葉」には、ユーザーの思考や感情、ニーズに関する多くのヒントが隠されています。これらの言葉を丁寧に収集し、オフィスツールを活用したステップで分析することで、プロダクトの課題発見、改善、そしてユーザーとのコミュニケーション最適化に繋がる価値ある洞察を得ることができます。

特別なツールや専門知識がなくても、普段使い慣れたスプレッドシートやドキュメント作成ツールがあれば、すぐにでもユーザーの言葉の分析を始めることが可能です。本記事で紹介したステップを参考に、ぜひあなたのプロダクト開発にユーザーの「生きた言葉」を活かしてみていただければ幸いです。