エラーメッセージとヘルプコンテンツのUXを高める:非デザイナーがオフィスツールでできる改善ステップ
エラーメッセージとヘルプコンテンツのUXがなぜ重要か
プロダクトを利用するユーザーは、予期せぬ問題に直面したり、特定の操作方法が分からなかったりする際に、エラーメッセージやヘルプコンテンツを参照します。これらの要素は、ユーザーが困っているまさにその瞬間に接するものであり、プロダクト全体のユーザー体験(UX)に大きな影響を与えます。
分かりにくく不親切なエラーメッセージはユーザーを混乱させ、問題解決を妨げます。また、必要な情報がすぐに見つからない、あるいは内容が理解しにくいヘルプコンテンツは、ユーザーのフラストレーションを高めます。これらの小さな不満が積み重なると、ユーザーはプロダクトに対する信頼を失い、利用を諦めてしまう可能性もあります。
逆に、ユーザーを適切に誘導し、問題解決やタスク達成を助けるエラーメッセージやヘルプコンテンツは、ユーザー体験を大きく向上させます。これは特別なデザインスキルが必要なわけではありません。プロダクト開発に携わる非デザイナーの担当者でも、ユーザー視点を持ち、普段使用しているオフィスツールを活用することで、効果的な改善に取り組むことが可能です。本記事では、その具体的なステップをご紹介します。
エラーメッセージのUXを改善する
エラーメッセージの目的は、単にエラーが発生したことを伝えるだけではなく、ユーザーが問題を理解し、解決するための手助けをすることにあります。
現状の洗い出しと課題特定
まずは、現在プロダクトで使用されているエラーメッセージをすべてリストアップすることから始めます。これはスプレッドシートなどを使って行えます。メッセージ内容、発生条件、ユーザーが取るべきとされる行動などを記録します。
次に、リストアップした各エラーメッセージについて、ユーザー視点で以下のような問いを検討します。
- このメッセージは、ユーザーが何について困っているのかを正確に伝えているか
- エラーの原因が分かりやすく説明されているか
- ユーザーが次に何をすべきかが明確か
- 専門用語が多すぎないか、ユーザーが理解できる言葉で書かれているか
- ユーザーを不安にさせるような、冷たい、あるいは威圧的な表現になっていないか
カスタマーサポートに寄せられる問い合わせ内容や、ユーザーからのフィードバックも重要な情報源です。特定のエラーに関する問い合わせが多い場合、そのメッセージが分かりにくい可能性が高いと言えます。
改善の原則と具体的な方法
良いエラーメッセージには、いくつかの原則があります。
- 明確さ: 何が問題なのかを曖昧さなく伝えます。
- 具体性: 可能であれば、エラーの原因や影響範囲を示唆します。
- 建設性: 問題解決のための具体的な行動を促します。リンクや問い合わせ先を示すことも有効です。
- 丁寧さ: ユーザーを責めることなく、共感的なトーンで伝えます。
これらの原則に基づき、洗い出した各エラーメッセージの改善案を検討します。例えば、あるエラーメッセージが「システムエラーが発生しました」とだけ表示される場合、これを「一時的にサーバーとの通信に問題が発生しました。しばらく待ってから再度お試しください。」のように、より具体的で解決策を示す内容に修正することを検討します。
改善案は、元のメッセージと並べてスプレッドシートに記録し、チーム内でレビューできるようにします。
ヘルプコンテンツのUXを高める
ヘルプコンテンツの目的は、ユーザーがプロダクトの利用方法を理解し、自身のタスクを達成できるように支援することです。
現状の把握とユーザーニーズの理解
ヘルプコンテンツの改善も、現状把握から始まります。利用しているヘルプシステムのアクセスログや検索キーワードのデータがあれば、ユーザーが何に関心があるのか、何を探しているのかを知る手がかりになります。
また、カスタマーサポートへの問い合わせ内容も重要です。FAQとしてまとめるべき情報や、ヘルプコンテンツが不足している領域が見えてきます。
ユーザーが特定のタスクを達成しようとする際に、どのような情報が必要になるのかを想像することも重要です。これは、カスタマージャーニーマップやユーザーフローを簡略的に作成することで、ユーザーの行動とそれに付随する疑問点を可視化できます。ドキュメント作成ツールなどで、ユーザーがプロダクトを使い始める、あるいは特定の機能を利用する際の一連の流れを書き出し、それぞれのステップで「ここでユーザーは何を知りたいだろうか?」と問いかけてみましょう。
改善の原則と具体的な方法
良いヘルプコンテンツは、ユーザーが「必要な情報に、迅速かつ確実にたどり着ける」ことを目指します。
- 見つけやすさ: ヘルプコンテンツへの導線が分かりやすいか。カテゴリ分けや検索機能は適切か。
- 分かりやすさ: 内容が平易な言葉で書かれているか。画像や動画が適切に使われているか。
- 網羅性: ユーザーが知りたい情報が揃っているか。主要な機能やよくある問題がカバーされているか。
- タスク指向: 特定の機能を説明するだけでなく、「〜をするにはどうすれば良いか」といった、ユーザーのタスクに基づいた構成になっているか。
現状把握で特定された課題に基づき、具体的な改善案を検討します。例えば、特定の機能に関する問い合わせが多い場合、その機能の説明をより詳しくしたり、操作手順をステップごとに分かりやすく示したりすることを検討します。検索キーワードに特定の用語が多い場合、その用語で検索しても関連情報が見つかるように、キーワードの追加や内容の修正を行います。
ヘルプコンテンツ全体の構成を見直す必要がある場合は、ドキュメント作成ツールやプレゼンテーションツールで簡易的なサイトマップを作成し、ユーザーが情報をどのように辿るのが自然かを検討することも有効です。
チームでの連携と継続的な改善
エラーメッセージやヘルプコンテンツの改善は、一人で行うものではありません。開発チームやカスタマーサポートチームとの連携が不可欠です。
改善案は、スプレッドシートやドキュメントとしてまとめて、チームメンバーに共有します。開発チームには、技術的な制約や実装コストについてフィードバックを求めることができます。カスタマーサポートチームからは、ユーザーの実際の困りごとに関する貴重なインサイトを得られます。
改善を実施した後も、効果測定を忘れないようにします。エラーメッセージが表示される頻度に変化はあったか、特定のヘルプ記事のアクセス数や滞在時間はどうなったか、関連する問い合わせは減ったかなど、可能な範囲でデータを追跡します。そして、これらの結果を基に、さらなる改善へと繋げていきます。
まとめ
エラーメッセージとヘルプコンテンツは、プロダクトのUXを構成する重要な要素です。特別なデザインツールや専門知識がなくても、ユーザー視点を持ち、普段使用しているオフィスツールを活用することで、これらの要素のUXを効果的に改善できます。
現状の洗い出し、ユーザー視点での課題特定、改善原則に基づいた具体的な修正案の検討、そしてチームでの連携と継続的な改善サイクルを回すことが成功の鍵となります。本記事で紹介したステップを参考に、ぜひプロダクトのユーザー体験向上に取り組んでみてください。